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「照っ殺されるぞ〜」。この時期、昼下がりの歩道を歩いていると、頭の後ろから宝島のおばあ達の声が聞こえてきます。若かりし頃、暢気に勝手に暮らしていた鹿児島県トカラ列島宝島のことです。もう遥か昔のことですがそのころは灼熱の太陽の中、いつも裸同然の格好で波しぶきを浴び、島中駆け巡っていました。そんな私を見かけると、いつもおばあ達(島ではおばあさんのことをこう呼んでいました)が声を掛けてきました。
島の海岸には切り立った岩山があり、時折そこに登って昼寝をしたものでした。野生の山羊たちが遊びに来るだけの場所で、波の音と風の匂いだけのゆっくりとした時間が流れていました。私にとって青春を凝縮した時刻ときであったのかもしれません。 今、真夏の海を眺めにゆくと、きらめく光の中に若者達の嬌声が波の音に混じって聞こえてきます。 きっとあの足元の潮 のなかには、今も変わらず美しい魚がいっぱいだろうなあ。遙かに遠い日がきらきら揺らめいています。…せめてこの暑さを乗り切るためにも 波しぶきを浴びた時のように一日一日青春の思いを持って生きたいものですね。
*表紙は「豊饒の海」で流木を岩に見立てて作ってあります。小魚やエイや亀が泳いでいます。 私達は太古の昔からこのような恵まれた海に囲まれた 生活をしているのですね。
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