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まだ暑い頃のことでした。清水の山原堤の溜め池に清流が注ぎ込むその山道を歩いていると、前方の高い木立の上からふわふわと落ちてくるものがありました。駆け寄って手のひらに受けてみると小さなカマキリの抜け殻でした。あまりの美しさに目を見張りました。きっと抜けたばかりだったのでしょうか。そっと持ち帰り、早速、表紙の作品に仕上げました。その抜け殻は流木の上にきちっと立ち上がっています。それに対峙して鎌を振り上げている青いカマキリを作りました。作品名「幻影に挑む」。なにか遠い日の自分を見ているような気がしたのです。 その背後には鮭をあしらった茶筒の「豊饒」を置きました。今頃、遙か北の川を勢い良く飛沫を上げて遡っていることでしょう。
深夜、目覚めると窓から月光が皓々と差し込んでいます。澄んだ虫の声が遠くから響き渡り、この季節に入ると山では枯葉が降り始めます。もう冬の仕度が始まったのですね。 |
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